〈テキスタイルデザイナーに聞く〉ファブリックの選び方&魅せ方

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テキスタイルデザイナー・橋口さんのお住まいを訪問し、お話しを聞くコラムの第2弾。前編『モダンインテリアの作り方』では、洋と和、素材や時代をミックスするコーディネート術を教えていただきました。後編はインタビュー形式で、洋室でのプリーツスクリーンの使い方や生地選びのコツ、ファブリック製品の楽しみ方などをお届けします。
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FILO WORKS(フィーロワークス)
代表 橋口 典代さん

テキスタイルデザイナー/ディレクター

神戸芸術工科大学を卒業後テキスタイルメーカーで糸開発・染色・製繊の経験を積む。その後、大手インテリアメーカーのチーフデザイナーとして商品開発に携わる。ミラノサローネをはじめ、幅広く海外の展示会を視察し、インテリアトレンドセミナーや企業向けのワークショップ・セミナーの講師も務める。また、原素材から製品までの幅広い知見を活かし、糸からファブリックスを企画開発する仕事を行っている。

Instagram:https://www.instagram.com/filo_works/
HP:https://filoworks.info

“洋”に合うプリーツスクリーンの選び方

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――まず、窓まわりにプリーツスクリーンを選んだ理由を教えてください。リビングや玄関など、和室ではなく“洋”の空間ですが……。

日本では“和”のイメージが定着しているプリーツスクリーンですが、海外では“洋”として普通に使われています。わたしはミックスコーディネートが好きなので、イタリアンモダンに少しだけ東洋の息吹を加えたかったのです。そのような空間にはプリーツスクリーンがぴったりでした。

また、上下にドレープ(厚地)とレース(薄地)を配した「ペア」は、採光しながら目隠しもできます。日射しの強弱や人通りに応じて上下の生地の分量を変えられるので、とても使いやすいです。

――ドレープ(厚地)には、“ホナミ遮熱”という生地を選ばれていますね。

まずは窓が大きいので、夏場の省エネになる「遮熱」の性能に魅力的を感じたのがひとつ。
そして、デザイン面でもホナミ遮熱を選んだ理由があります。“ホナミ遮熱”という生地は「不織布(ふしょくふ)」で、ランダムに散らせたポリエステルのファイバーに樹脂を塗って熱圧着した布です。タテ・ヨコに糸が交差する織生地とは違い、糸がランダムなぶん日射しを柔らかく通します。厚地といってもほどよい透け感もある。そのような不織布の特性が、“洋”の空間によく合うと感じました。

余談ですが、わたしは生地を選ぶとき、カットサンプルを取り寄せて窓に貼ります。時間の経過によって変わる光や色の見え方を確認するためです。昼間と夜でもかなり変わりますね。
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モダンな空間にプリーツスクリーン
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生地を選ぶ際は、カットサンプルを窓に貼り付けて見え方を確認

“メカもの”ならではのファブリックの魅力

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――ドレープ(厚地)選びで、“透けない”ことではなく“光の入り方”を考慮されている点がとても新鮮です。

カーテンの場合は、日中ドレープ生地を横にたたんでレースだけの状態にします。昼間は薄地しか楽しめないところがあるのですが、プリーツスクリーン「ペルレ ペア」の場合はドレープ生地を残しておくこともできますよね。それが“メカもの”のファブリック製品の素敵なところ。「日の光を味方にする」アイテムだとわたしは思っています。厚地であっても光の通し方に気を配っておくとよいと思います。

――とても勉強になります。ところで、豊富なカラーの中から「クルミ」というベージュ色を選ばれた理由を教えてください。

ダイニングの照明と一緒に吊るしたマンザニータの木に合わせています。ベージュ系とグレー系でいくつか候補を絞りましたが、グレーだとモダンになりすぎたのでベージュを選びました。
ドリアデ社のネモアームチェア、パトリシア・ウルキオラがデザインしたダイニングチェア、壁にかけたアートなど、この家ではパッと目につくアイテムをブラックで統一しています。そのようなモダンな空間に、木の素材感や優しいベージュ色でやわらかさをプラスしていったイメージですね。
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――窓辺のコーディネートを楽しむコツを教えてください。

窓まわりのアイテムを選ぶ際に多くの方が気にかけるのは、色柄と透けるか透けないかの2点だと思います。そこに「見せる=魅せる」という視点を加え固定観念を取りはらうと、楽しさが広がるかもしれません。

例えば、「日が暮れて点灯する時間にはドレープを閉める」という習慣。
夕刻から夜にかけての時間、わが家では天井から照明の下までをレースにしています。公園を歩く人たちに、マンザニータの木と照明の演出を見ていただきたいからです。「どうぞご覧ください」と(笑)。さらに足元は少しだけオープンにして、室内からベランダに置いたライトの灯りを楽しんでいます。

全面をドレープ生地にするのは、夜が更けて就寝の頃合いになってから。すると完全にプライバシーが守られた空間となり、心が落ち着きます。

――確かに、天井付近や足元は外から見えても問題はありませんね。

先ほども触れましたが、カーテンの場合は横方向に開閉するため夜は“中を隠す”という発想になりがちです。けれども“メカもの”のファブリック製品は、縦方向にプライバシーを調整できるのが魅力だと思います。

使ってみてわかったことは沢山ありますね。引越し当初は、朝・昼・夜と生活のリズムに合わせて生地バランスを変えられるのが便利だと思っていました。少し長く暮らしてみると、季節によっても日の光が変わることを知りました。自分なりの工夫で光の楽しみ方が広がるとわかったことが、新たな発見だと感じています。
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公園を行く人の目を楽しませる演出
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室内からは、ふけゆく夜と足元の灯を慈しむ

電動操作の使い勝手は?

――電動は実際に使ってみていかがですか。

とても快適です。この窓は幅が2.6mもあります。手動操作だったら少し重く感じたかもしれません。リモコンで微妙な高さ調整ができるところも気に入っていますが、リビングと玄関のプリーツスクリーンを同時に動かせるのもいいですね。2台を別々に開閉する手間が省けますし、リビングと玄関で水平ラインをビシッと揃えられます。

次にデザイン面のメリットをあげると、製品に操作コードやチェーンがなくすっきり見えるところでしょうか。愛犬のビビアンがコードにひっかかる心配もなく、安心です。また、窓横に操作するスペースをとらなくてよいので、家具や小物を自由に置けるのも魅力ですね。

あとは防犯性。スマートリモコンを導入すれば遠隔操作で生地を切り替えできるので、旅行や外出時でも人が生活しているような印象を与えられます。

「ホームタコス ペルレ ペア」の動きはこちら
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住む部屋で人生は変わる

――お家の中で好きな場所はありますか。また、普段はどのように過ごされているのでしょうか。

夫は、起きてすぐリモコンでプリーツスクリーンを全開にするのを楽しみにしているようです。
リモートワークの日には、ダイニングで公園の緑を見ながら仕事をしています。会議が始まる前にホナミ遮熱(厚地)の分量を多くするなど、プリーツスクリーンを調節しながらリモートワークを満喫しているようです。
 
わたしは、事務所が別にあるので家ではリラックスして過ごしています。ネモアームチェアに腰かけ静かに過ごす時間は、至福のときです。コーヒーを飲みながら本を読んだり、景色を眺めたり……。
引越しを機に「人生の断捨離」をして、好きなものだけに囲まれたインテリアを目指しました。住む部屋で人生は変わりますね。
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もっと自由に、窓辺のコーディネートを楽しもう!

前編『モダンインテリアの作り方』と合わせて2回に渡り、テキスタイルデザイナーに学ぶヒントをお届けしました。タチカワ実例集『デザイナーのこだわりがつまったモダンなお部屋』でも、橋口さんのお住まいをご紹介しています。
今回、「光を味方にする」「見せる(魅せる)インテリア」など、ファブリックの新たな楽しみ方を発見できたのではないでしょうか。既存の枠にはまらないアイデアはとても素敵で、「住む部屋で人生は変わる」とおっしゃった言葉が心に響きました。「もっと自由に窓辺のコーディネートを楽しんで」橋口さんからのメッセージをぜひ実践してみてください!
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